2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

人の夢

Kは猟銃を持っていた。銃など扱ったことはないが、ここでは彼は立派な猟師だった。夕暮れの涼しい風が吹き抜ける。ここまで彼を導いてくれ、銃も手渡してくれた気のいい少年の合図があると、木々の影から鳥が一斉に飛び立った。Kは銃を撃ち放ち、二、三匹の…

目覚めると、どこからともなく鐘の音が聞こえる。朝の光が射す居間一杯に、銀色の鐘の音が響いている。鐘はいくつもあるかのように、不規則に打たれ、重なり合い、反響する。鐘は空中で鳴っているようだ。遠近感がよく分からず、それらは離れているのかもし…

地下のカラオケ

彼女と僕は地下室で歌っていた。僕は酔っている訳ではないが、陶然としていた。しかし僕は自分が妙な状態に入っていることを口に出して言いはしなかったので、上機嫌なだけで普通なように映っただろう。照明のせいで部屋が全部深い青に、またピンク色に見え…

△1296

△1296

非在

僕は、 手がなくても取ることができ、 耳がなくても聞くことができて、 口がなくても話すことができ、 目がなくても見ることができるだろう。あなたもまた、 手がなくても取ることができ、 耳がなくても聞くことができて、 口がなくても話すことができ、 目…

夢の泥

もしも目覚めて最初の夢の中で、道行く人と出会ったら、僕は、あなたはどこからきたのか、と尋ねる。 本当は、夢の泥から彼が作られたことを知っているのに、なぜ自分がそう聞くのかもしらない。夏の陽が強く差していて、何もかもが霞んで消えるようだ。

自分自身の来し方に深く根ざす美に出会う旅情 どこに出かけても自分自身を見出すことはすばらしい。 季節を見出すことはすばらしい。 小さな時間の中で生きている。 すべてが夢のようであることはすばらしい。 訳もない時間に深く入ってしまうこと。 僕が感…

死の練習

反転

すべてが転換し、断絶する。今まであったものが全く失われるか、あるいは根本からその意味づけを変えてしまう。 こうした転換への意識、何もかもが裏返しになる、世界が反転する、と言ったイメージは、非常に重要なもので、死のアナロジーでもある。 つまり…

空間の中身を見せる装置

「これは空間の中身を見せる装置です」と言って差し出された、万華鏡のような筒。いや、実際僕はこれを、万華鏡なのかなと思った。 「だけれども、万華鏡と違うところは、この装置が空間の中身、つまりその真の実在を見せる、ということです。空間は、人間に…

夢の中に何度も同じ扉が出てくるとしたら、その向こうに何があるか気になるよね。中は一体どうなってるんだろうなって。もしかしたら大したものは何もないかもしれないけど、やっぱり何となく気になる。それも、何というか、すごく意味ありげに現れてくるん…

子供三人でベイブレードをしている。 この家の階段は怖いほど暗い。 庭の焼却炉で爺さんが何かを燃やしている。煙が家の周りの畑の空を風に吹かれるまま横切っていく。 焼却炉の傍には檻がいくつもあって、オウムや鶏が飼われている。 大きな柿が成っている。…

シャーマン

ものすごい模様をした壁の前に彼は立っている。彼はとても小さくみえる。彼はシャーマンらしい。

基本的に、あらゆる物事は古くみえる。何度も同じことを繰り返してきたし、新奇なものなどそう生まれはしない。これは自分自身の経験についてもそうだし、他の人々も同じような経験を共有していて、またこれまでの歴史もそうなのだ、と思う。一面これは事実…