2018-01-01から1年間の記事一覧

脳内で展開される阿弥陀クジ

虹鱒(山の清流) 寒空の下で煙草をふかす男がいて、誰かがその男に挨拶をする 昼食は薄暗い食堂のカレーライス 美術館で変な青い色をみる。見たことがない青色で、神秘的で不気味だ 卵を割って黄身が白い器に入る 坑夫は深く土を掘る。それは夕暮れのことだ…

目が覚めると妙な気配がして、台所に行ってみるとオーブントースターで餅のようなものが焼かれている。 誰がこんなことをするのか、と思っていると、玄関のドアが開いてEが入ってくる。彼女はなぜか派手な格好をしていて、背後から午前の一杯の陽射しが見え…

「待ってください、なぜF2という呼称が出てきたんですか?」 僕たちは車に乗っている。窓の向こうは風の黄色い工場や倉庫のようで、何度も道を曲がって似たような景色を繰り返す。生田さんは少し髪が長く、短い口髭が生えていて、意地悪くさぐるような、それ…

あなたは死者である。夜の底からゾンビのように這い上がる死者。 彼の恋人は死者である。夜の闇の中で、薄明かりに彼女の顔がほの白くみえる。二人は並んで立ち、その場に止まっている。彼女の(まるで啓示のように)温かい手に胸の高さで触れる。 <林檎や…

✳雪の日について 実家はマンションで、三階から入って中に階段があって二階へ行けた。つまり実質は二階建ての家に住んでいるような感じだった。 実家の街はそんなに雪は降らなかったが、東京よりは頻繁に雪が降っていたように思う。それでも年に数回くらいで…

別に芸術の話なんかじゃなくてもいい。どんなことでもいい。客先に向かう電車の中でぺちゃくちゃ喋るようなムダ話。喫茶店で特にあてもなくあれこれと話すこと。そういうのがすごく好きだ。色々話して考えて、そしてすぐに全部忘れてしまうようなこと。それ…

実家の洗面所の白い照明を受けて、僕は鏡の前にいる。手のひらで掬った蛇口の水を、口いっぱいに含む。吐き出すとき、水は真っ赤な血に染まっている。ピンク色の細かい泡が浮いて、大きく旋回しながら流れていく。

10月30日(火)の自動筆記

空間の吐瀉物。僕は夜に斧を振り下ろす。白い仮面が笑う。空に風船が飛んでいく。大雨が降り、僕はバス停の屋根の下にいる。誰かが僕の右ポケットに手を突っ込み、財布を盗んでいった。ガラス越しに二人の男が喋っているのがみえた。二人とも長いコートをき…

10月17日(水)の自動筆記

旅先の日本邸宅はとてもひっそりしていた 強くて白い、温かい光に照らされて、一人の女が裸で寝ている 誰もいない公園のバスケットゴール 運動会の喧騒で、まだ背の低い僕は白い運動着を着た子供たちに紛れて何もみえない。砂埃が風をにごらせている。拡声器…

10月16日(火)の自動筆記

シンプル 痣 政変 クルーザー かまきり かまいたち セブンイレブン 宇宙旅行 そろばん 胡麻塩 クリーニング店 コアラのマーチ 渋谷 ガソリン代 孤島 シュノーケリング オフィス インドの夜 路線変更 崖 クリスマス 男の喉 雪が降る路上 彼は咳き込んでいる …

2018.10.12の自動筆記

僕は彼女に心底愛情を感じていたと思った。そして愛情とはこういう質のものだとは知らなかった。僕は愛とは自由だと思った。それはすっきりと晴れた秋の日の、何の淀みもないと言えるような空気、それを肺一杯に吸い込んで時間の流れを楽しむような、瑞々し…

海に一人で行くんだ

『海に一人で行くんだ』 静かな海の写真の音みたいな空でさ、 それは触発されるよな つかれてコーヒーを買うとおまけについてくるみたいなノリで、 みたことないケモノがまた増えて 二重写しで思う遠くの土を踏む足に似合う靴で、 出かけたらもう戻ってこれ…

印象

ガラスの破片で、右腕を深く傷つける。あまりにもなめらかに切れるので、まるで腕が豆腐か何かのようだった。激しく血が流れ出し、どくどくと生温かく、ねばつく感触が伝わってくる。 耳元で、誰かがささやく声が聞こえる。貧血のように目の前が暗くなり、意…

喫茶店

早くから僕は喫茶店でコーヒーを飲んでいた。その店には人がたくさんいたが、静かで落ち着いていた。男はすでに僕のテーブルにいて、こっちに向かって何かを話している。僕はその男が何のためにここへやってきたのか思い出せない。何かを売り込もうとしてい…

無題

子どもの頃、コンビニでコアラのマーチを食べた。あとハロハロも食べた。冷房が効いていて涼しかった。窓の外は空気がゆらゆらするほど暑いのだった。自転車がいくつか立っていた。ハンドルもものすごく暑いだろう。 部屋に子どもたちが一杯いて、みんなが同…

2018年6月23日の無題

その日は一日中部屋で音楽を聴いていた。病気と疑われるほど暗くした部屋で。繰り返し聴いていたら、夕方になっていた。じっと籠っていたせいで感覚が変で、自分のことを幽霊みたいなだな、と思って川沿いの緑道を歩いていた。暮れていく空はこわいような赤…

詩『白い人が挨拶する…』

白い人が挨拶する 僕はほとりに立っている ハープの音が聞こえたら よく似た記憶を思い出す 暗闇から 手がはえた 誰かが録画をまき戻すような感じ 音のつぶれた呟き ぼそぼそした 回転する光 また明日のことを考えるのか それとも昨日のことを また白い人の…

脈絡のない考え(1)

空で白い旗がぱたぱたはためく。 濁った空の下で僕は居心地が悪いなと思う。こうして午後に居心地が悪く感じて仕方ないことがある。それは体が服でその服が寸づまりだとかちくちくと毛羽立っているような感じだ。服だからどこへ行ってもどこまで行っても居心…

連想2

冬の暖かい居間の絨毯に尻をついて座って、その子はポテトチップスを食べている。絨毯は深い赤色で、夜のように深い青に星空のような刺繍が入っている。身のまわりには長いヘビのぬいぐるみが、くつろぎ切ったように寝ている。滑車がついて紐で引くことので…