2024-01-01から1年間の記事一覧

夜の黒猫

夜の影の中を、殆ど姿の見えない黒猫が横切る。 僕はずっとあなたに電話したかったんだよ。ごめんね。自分は弱い人間だから、自分に取って大切なものが何なのか、分からなくなっていたみたいだ。 今からでもまだ間に合うだろうか? 夜風は昔と同じ夜風だ。真…

小島信夫の感想

わかりにくく立体的な文章は、現実の道に喩えられる。ある道を行くときに、その道中に存在する風物は、現実世界に、(それが意味するところは曖昧だが)全的にそこにある。しかし、そこを実際に歩いていく時には、その道は特定の時間に、特定の視座から、特…

雪女

いや、うーん。な、る、ほどな。まあそんなふうに、全体的にしか論じられない人はいますからね…、でも、いや、そうか? 別の角度から考えたら、むしろ分かるかもしれない。それってつまり、例えばこういう山があるとして、そこに何人登って、何人降りてくる…

天井を眺めながら

私ね、昔みた映画ですごく印象に残っているのがあって。でも、子供の頃にみたのやつだから、あまり覚えてなくて、それに、旅行先のホテルでみたんだと思うんだけど、だから、タイトルとかもわからないのね。覚えてる記憶も断片的で、なんか夕日に沈んでく街…

司会

すごく馬鹿馬鹿しい話なんですよ。私は今までそうやって考えたことはない、いや、常に考えているんです。こうやって縮こまって暗い部屋の中でじーっと自分の考えをいじくっているとですね、あるときピコーンと脳裏に閃いてくることがあるんです。それが一体…

朝走っている時に感じる、太陽の印象。橋の上まできて、その下を流れている川が気になって立ち止まる。何ということはない川だ。特段の謂れや、際立った景観があるわけではない、近所の川。その川の、手前の方は透明で、中を魚が泳ぎ、石の転がっているのが…