結局それは寝言のようなことだけど、逆に寝言でないようなことがあるだろうかと思う。今、こうして生きていて、本当にはっきりしていることが、どれだけあるか。砂つぶのように手から滑り落ちていくとは思わないか。別に、それは悪いことではなくて。むしろ、随分と素晴らしいことなのだと思う。何もかもが擦り抜けて行き、何も形跡が残っていないと感じることは、祝福されたことだと思う。これはありふれた感情の、別の表現に過ぎない。この一瞬一瞬が素晴らしい。もうすぐ夜が来て、闇の中にやがて沈むように思えるこの一瞬が、何とも言えず素晴らしい。これは耳鳴りのような、何も根拠を持っていない錯覚に近いものだとしても、僕はその耳鳴りが美しいと思う。それが聖なるものであると思う。あらゆるものが壊れていて、それでいて喩えようもなく美しく、切ない。