明るい部屋の中で、漠然とした午前を、コーヒーを飲みながら過ごしている。

この黒い上着が好きだ。これを着ていると気分が落ち着く。気分を落ち着かせる黒い上着があることは幸福だ。幸福とはこうした所有の中にあるのだ。全く、リラックスしているということは、別に、何と言うことでもないのだけど、でも、この黒い上着を着て、ここに座っていることは、確かに心が落ち着いて、幸福なのだと思う。

それは、子供の頃に持っていた、大好きな、でも、具体性を欠いた、抽象的な、愛着の対象であるような、中身のない、壊れた、ありふれている、希少な、何かに似ている。何が? 何が、というわけでもないけれど。