引っ越し屋のスタッフが両側から荷物を吊って、マンションの階段をゆっくりしたペースで運んでいく。こんなふうに魂が運ばれていくんだな、と思う。何となく眠い。

 

子供たちは駄菓子屋の前に自転車を停めて集まり、甘辛くて手がベタベタになる20円のイカのおやつを食べている。

 

校庭のフェンスの信じられないくらい高いところに、ぼろぼろになった花輪が付いている。

 

深夜の街をビカビカと光を放って走る車は、ささやかな走行音しか立てていないのにも関わらず、耳をつんざくほどのうるささに感じる。

 

このまっすぐな道の遥か先で、地獄に繋がるその大きな口を広げて待っている悪魔。

 

その女の子に小さな包み紙に入ったラムネを渡した夕方。

 

どこの誰かわからない家族の色々なシーンが写っている写真が、公園をちょっと出た道路の脇に散らばっている。少し色が褪せていて、古い写真なのだろうな、と思う。

 

夕暮れの時間。僕は自転車に乗って、家に帰ろうとしている。

夕暮れの誰もいない教室。廊下を均等な速度で奥へ向かって歩いていく先生が、窓から見える。

 

彼女の指。

 

辺り一面が、黄味の強い濁った灰色に染まっている。そんな曇り空の時間。