四角、闇、シャワー

『四角』

 いくつかの色のパターンが見えた。きれいな四角の光だった。和紙のようにざらざらして、闇の中で光っていた。薄い桃色にも、紫色にもなり、青くもなり、赤くもなる。青や赤はとても濃い、深い色で、少し怖かった。こうした大きな四角が、凧のように視界の闇の中を漂った。水族館の真っ暗な水槽の中を泳いでいる、深海生物のようでもあった。切なげに感じた。

 橋の上から、夕陽の丁度、とても美しい時間帯に、川原でキャッチボールをしている人の様子を、眺めているときの感覚に近かった。とても遠いので、球を投げ、受ける時の音が、風に紛れて聞こえないか、目に映る視覚の像よりも、少しずれて、ごく微かに聞こえるように。

 夕暮れの空の中に、透明な四角い枠が動いていく。

 

 

 

『闇』

 闇の中に心だけが滲んで行けるなら。そして、心が夕暮れのように、美しく暮れて行けるなら。そうなりたい。旅に出る夢を見る。走る夢を見る。林の中にいた。川が流れていた。そしてここで今、休んでいる。魂。ブランコ、影、ざわめき。

 

 

 

『シャワー』

 ぼんやりした明かり。頭を洗う。頭を洗う作業。シャワーを浴びる。泡が排水溝に流れる。水の高い音。障子。月。涼しくそよぐ風。湯船に浸かる。月。目。肌。肉体。水面。波紋。運動場。シャワー。夏のプール。磨りガラス。バスタオル。今日は妙に疲れた。いつも疲れているか。暗い誰もいない教室に並んで貼られた絵。後背位。憂鬱。夜。深い眠り。ベランダに出て月を見る。寝静まった、見慣れた近所の風景。鏡を見る。Tシャツを着る。化粧水をつける。