人間の顔が砂になって、しゃりしゃりと雨の降るような音を立てながら落ちていくのを見るのは、子どもに還ったように懐かしい。

何かに夢中になっていたのか、ふと目を上げたときにそこへ停車していることに気づく駅。自分自身の意識と空間に変な仕方で焦点が当たるのに気づく夜。そうだ、この舞台はまだ続きなんだ、と思うような。その先の筋書きまで知っているはずなのだけど、何かに邪魔されるように思い出せない。舞台を鳴らす靴の音が広い空間にこだまする。

その家は精神の中に建てられている。その柱は地面ではなくて宙に支えられている。心の空間は現実の空が気体に満たされているように柔らかいものに包まれている。風が吹けばその家は揺れる。