あなたは死者である。夜の底からゾンビのように這い上がる死者。

 

彼の恋人は死者である。夜の闇の中で、薄明かりに彼女の顔がほの白くみえる。二人は並んで立ち、その場に止まっている。彼女の(まるで啓示のように)温かい手に胸の高さで触れる。

<林檎や桃といったみずみずしい果物。夜の静かな海。誰もいない部屋。ノイズのような思念(能面に似た顔が現れる)>

 

彼女の服の裾を引いて、彼はとても長い廊下を行く。突き当たりのドアの先では、斬首や火刑といった残酷な行為が行われている。

「飴をひとつ食べると、またべつの飴が現れる」などという言葉を彼は聞く。

ドアを開くとそこは夏の夜の闇だ。