『海に一人で行くんだ』
静かな海の写真の音みたいな空でさ、
それは触発されるよな
つかれてコーヒーを買うとおまけについてくるみたいなノリで、
みたことないケモノがまた増えて
二重写しで思う遠くの土を踏む足に似合う靴で、
出かけたらもう戻ってこれないのにルール違反が常だから生活してるよね
ぬるすぎるから買って帰ったチョコレートのビニールの音の方に
やたらに嬉しさを感じるみたいな病んだ幸福さで
搔きむしるから喉と結露した窓がいっしょになって
懐かしいことばかりラジオの声で話すから嫌気がさして
海に一人で行くんだ
海に一人で行くんだ
それは
帽子もコートも財布もカメラもなく
うしろのポケットにひとさし指がすっぽり入る
穴が空いてるみたいなことで
うしろ手にドアをしめて
もうみえないしわからないし忘れるしかないけど
絶対前にはあった場所に
真っ赤なプレゼントが用意してあるみたいな
そんなことで
一瞬にしてまた忘れてしまうわけだ。