詩『白い人が挨拶する…』

白い人が挨拶する

僕はほとりに立っている

ハープの音が聞こえたら

よく似た記憶を思い出す

 

暗闇から 手がはえ

誰かが録画をまき戻すような感じ

音のつぶれた呟き ぼそぼそした

回転する光

 

また明日のことを考えるのか

それとも昨日のことを

また白い人の立っているほとりで

病気の僕は嬉しい

 

それは幻のことでしょう と彼女は言う

まるで天気予報のうけ売りのよう

暗闇から手をはやすみたいな

流れ作業のような工程で

 

なるべく早くするのだと 白い人は言う

暗闇から手をはやすようなはやさで

呂律のまわらぬ 早口のようなはやさで

言うのだと あのときの誰かは言う

 

まるで過去の録画をまき戻すような

すべてが新しい発見で

夜のうちに芽ぶく草葉のように

僕は静謐で 暗く眩しい

 

光を一身に受ける記憶のような

幻のようだと君が言うような

明日の天気のようにあてにならないような

昨日の天気のように確実なような

 

さようなら と言うとき僕は手をふって

機械に任せきった時間に 白い旗を飾る

もう一度鏡が戻ってくる かつての輝きのように

病気の僕はあまりにも静かな時を思う

 

まるで夜のうちに消えてなくなるような

朝になればすべてがまたあるような

昔の人に再会するような

恐いような幸せなような

そんな気持ち