ブルー

ただ時間が過ぎていくだけ。僕は何らかの感情を持って風景を眺めているわけではない。僕は生活の中に包み込まれている。花は香炉に打薫じ神なき祈りであるもの 時間という名前のない時間金のように輝く深い青

暗闇の中のブランコ。ロケット花火が夜空に爆ぜる。煙が漂っている。家路につくひっそりした夜道で、祭りの縁日の明るさがまだ瞼の裏にある。水風船を持って笑っていた赤い着物の女の子。僕が今歩いている道は静かすぎる。 古びた蛸の滑り台。砂煙の中にくす…

明るい部屋の中で、漠然とした午前を、コーヒーを飲みながら過ごしている。この黒い上着が好きだ。これを着ていると気分が落ち着く。気分を落ち着かせる黒い上着があることは幸福だ。幸福とはこうした所有の中にあるのだ。全く、リラックスしているというこ…

永遠に辿り着けないと思えるような迷宮を、もうくたびれ果てたと突き詰めたときに与えられるダイヤモンドのような輝き。僕はそれを思って泣きそうになるが、そうやって思いをかけたことさえ、いつ裏切られることになるかはわからない。結局は主観的な思い入…

幻視の練習

僕は夜のラーメン屋のカウンターにいる。 運命が決する夜、という感じがするけれど、何か特別なことがあるわけでもない。 想像力の中で、夜中に飛び降り自殺をすることの練習。眩しい光の中で、落下していく小さな黒い人影を想像することの練習。

部屋の窓からは水平線が見えた。陽が直に射し込むのではないけれど、照明をつけなくても室内は明るい。白い壁紙の貼られた壁が、不思議にほの青く感じられるのだった。 彼女が廊下から何かを探してこちらの部屋へ入ってくると、どこか暗がりを抜けてすっと、…

広い夜明けの湖で、ふいにすべての風がやんだ。僕が櫂を漕ぐ手を止めると、舟が起こすさざなみが収まっていく。舟の動きもやがて静止する。スイカを切って青い陶器の皿に載せる。彼女もそれを食べる。横にたくさんの細い糸が張られていて、僕はそこを通り抜…

昼寝

・人は生きて色々な感情や思考を経験する。 ・特に強い感情を受けると簡単には処理できない。 ・現実で感じた感情や思考により、人は段々と自分自身から離れていく。遊離していく。 ・自分自身から離れたままで生きるのは苦痛である。自分自身の希望の源泉を…

人の夢

Kは猟銃を持っていた。銃など扱ったことはないが、ここでは彼は立派な猟師だった。夕暮れの涼しい風が吹き抜ける。ここまで彼を導いてくれ、銃も手渡してくれた気のいい少年の合図があると、木々の影から鳥が一斉に飛び立った。Kは銃を撃ち放ち、二、三匹の…

目覚めると、どこからともなく鐘の音が聞こえる。朝の光が射す居間一杯に、銀色の鐘の音が響いている。鐘はいくつもあるかのように、不規則に打たれ、重なり合い、反響する。鐘は空中で鳴っているようだ。遠近感がよく分からず、それらは離れているのかもし…

地下のカラオケ

彼女と僕は地下室で歌っていた。僕は酔っている訳ではないが、陶然としていた。しかし僕は自分が妙な状態に入っていることを口に出して言いはしなかったので、上機嫌なだけで普通なように映っただろう。照明のせいで部屋が全部深い青に、またピンク色に見え…

△1296

△1296

非在

僕は、 手がなくても取ることができ、 耳がなくても聞くことができて、 口がなくても話すことができ、 目がなくても見ることができるだろう。あなたもまた、 手がなくても取ることができ、 耳がなくても聞くことができて、 口がなくても話すことができ、 目…

夢の泥

もしも目覚めて最初の夢の中で、道行く人と出会ったら、僕は、あなたはどこからきたのか、と尋ねる。 本当は、夢の泥から彼が作られたことを知っているのに、なぜ自分がそう聞くのかもしらない。夏の陽が強く差していて、何もかもが霞んで消えるようだ。

自分自身の来し方に深く根ざす美に出会う旅情 どこに出かけても自分自身を見出すことはすばらしい。 季節を見出すことはすばらしい。 小さな時間の中で生きている。 すべてが夢のようであることはすばらしい。 訳もない時間に深く入ってしまうこと。 僕が感…

死の練習

反転

すべてが転換し、断絶する。今まであったものが全く失われるか、あるいは根本からその意味づけを変えてしまう。 こうした転換への意識、何もかもが裏返しになる、世界が反転する、と言ったイメージは、非常に重要なもので、死のアナロジーでもある。 つまり…

空間の中身を見せる装置

「これは空間の中身を見せる装置です」と言って差し出された、万華鏡のような筒。いや、実際僕はこれを、万華鏡なのかなと思った。 「だけれども、万華鏡と違うところは、この装置が空間の中身、つまりその真の実在を見せる、ということです。空間は、人間に…

夢の中に何度も同じ扉が出てくるとしたら、その向こうに何があるか気になるよね。中は一体どうなってるんだろうなって。もしかしたら大したものは何もないかもしれないけど、やっぱり何となく気になる。それも、何というか、すごく意味ありげに現れてくるん…

子供三人でベイブレードをしている。 この家の階段は怖いほど暗い。 庭の焼却炉で爺さんが何かを燃やしている。煙が家の周りの畑の空を風に吹かれるまま横切っていく。 焼却炉の傍には檻がいくつもあって、オウムや鶏が飼われている。 大きな柿が成っている。…

シャーマン

ものすごい模様をした壁の前に彼は立っている。彼はとても小さくみえる。彼はシャーマンらしい。

基本的に、あらゆる物事は古くみえる。何度も同じことを繰り返してきたし、新奇なものなどそう生まれはしない。これは自分自身の経験についてもそうだし、他の人々も同じような経験を共有していて、またこれまでの歴史もそうなのだ、と思う。一面これは事実…

それは神とは言えない。音を欠いた音楽であり、姿はみえないが存在を感じる。それは僕に親しみを覚えさせる。

神秘思想

拭いされない憂鬱のために泣いて暮らす 一瞬の盲目のために笑い合うことができるどしゃぶりの雨の中で晴れ切った空を幻視する身の回りを整えて生きなければならないという これは信仰に近い

蝿がぎっしり詰まった目の細かいネット。

ハエみたいなのがブンブン唸る部屋。部屋一面が唸っている。でも嫌というよりは癒やされる。不動産屋の女の人がいる。まあいい感じだという話になる。結局決めなかったのだけど、その夜にその部屋に住んで生活している夢を見る。 やけに窓の外の音が大きく聞…

Everybody's garden

ここはみんなのお庭です。

事実

人間は今のこの瞬間を生きているのに、実際にはこの瞬間の半分も生きてはいず、大半は幻覚の中を生きているのである。これはある特定の人に当てはまることではなく、またそういう見方もあるとかいう話でもなく、単なる事実だ。しかも、今というものもかなり…

さすらい

人生、今までどう生きてきたとか、これからどういう生活になるとか、全く考えることなく忘れて、自分が、ただのさすらいの旅人だと妄想する。僕はただ、今のこの自分の部屋に、さすらいの旅人としているだけなのである。何がさすらっているのかというと、魂…